兵庫県の中西部にある宍粟市。
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(図は、宍粟市のサイトより引用)

「市名が難読」ということで、「何と読むのか?」というクイズにしょっちゅう用いられています。
読み方を知るまで私は「あなぐりし」、「ささぐりし」、「あなあわし」か?と思っていました。
こたえは「しそうし」です。
宍粟市の公式サイトに載っている漫画によると、イワノオオカミという古代の神様が山川谷尾の境を巡行した際に大鹿に出会ったことから、「鹿に会う(シシアウ)」と名付けたとのこと。そのシシアウがシサワ(宍禾)になったそうです。
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(漫画は宍粟市のサイトより引用)

市街地になっているのは、中国道の山崎ICの周囲だけで、あとは山、山、川、そして山。自然たっぷりお気に入りのキャンプ場があり、しょっちゅう行っています。
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今回、5年ぶりにそのキャンプ場に行くことになり、「酒蔵があるかな?」と調べてビックリ。市街地に2軒も酒蔵がありました。なんと江戸時代の創業です。
私は「市街地ができたのは中国道が開通してから(1975年)で、それまでは山奥の小さな集落だったのだろう」と思っていたので意外でした。
いったい何故、市場がほとんどないはずの山奥で酒蔵があるのか?
その謎は、一緒にキャンプ場に行った人の話で解けました。宍粟市には姫路と鳥取をつなぐ国道29号線が通っているのです。もともとは江戸時代にできた因幡街道。鳥取藩の大名が参勤交代のために使っていた道です。大商圏の姫路で商売しようと日本海側から商人が来たでしょうし、姫路の産物を日本海側に運んだりして、きっと人の往来が多かったのでしょう。また、山崎藩の城下町になっていて人口が多かったために、日本酒の市場があったのでしょう。

2つの酒蔵のうち、老松酒造は1768年(明和5年)の創業で、山崎藩御用酒屋でした。DSC_0060
直売所には、商品がずらっと並んでいて、細かい説明書きが添えられていました。
今回私が選んだのは、寿惠広 老松 純米吟醸酒。宍粟市を南北に流れる揖保川の蒸留水を使用し、兵庫県産の山田錦を60%まで磨いて使っています。兵庫県のどこの山田錦なのかを質問しましたが、いろいろな箇所のお米を代わりばんこ使っていて、今回の分がどこのものを使っているかはわからないとのことでした。
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無濾過生原酒で、グラスに注ぐとほのかに濁りがありました。強めの吟醸香がします。口に含むと、濃厚で豊潤な味がじゅわっと来ます。「まさに生原酒!」という味です。最近飲んでいた軽やかなフルーティーなお酒とは異なるタイプで、久しぶりにガツンと飲みごたえのある味でした。

老松酒造がある通りの並びで、歩いて1分の場所に山陽盃酒造があります。
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1837年(天保8年)の創業。播州のものを、播州の蔵が、播州の水によって醸すことを信念としています。兵庫県「原産」の酒米にこだわっていて、使っているお米は山田錦、兵庫北錦、兵庫夢錦に限っているそうです。メインブランドは播州一献(ばんしゅういっこん)。一献とは「さかずき一杯の酒」という意味とのこと。
直売所に新しさとオシャレさを感じました。2018年11月に火事が起きて、敷地の半分が全焼するという被害を受け、直売所がある母屋は去年4月に再建されたそうです。蔵は今年5月に再建されたばかりでした(情報元)。

直売所にずらっと並んでいたお酒のなかで、楓のしずくを選びました。老松酒造で買ったお酒とは異なるお米(兵庫夢錦)を使っていることと、兵庫県最高峰の氷ノ山(ひょうのせん)山系の山から湧き出る水を使っていることに惹かれました。「しずく」というネーミングがいかにもおいしそう。精米歩合は60%です。
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フルーティーでかろやかな感じの香り。口に入れたとたんフルーティーさが来ます。でもそんなに主張はなく、まろやかにくる感じ。しばらく口に含んで転がしていると適度な酸味と甘みに幸せを感じてきます。極上の気分で飲み干した後の味はスッキリしています。
老松酒造で買ったお酒とはタイプが全く異なります。どちらも個性があって、それぞれの良さがありました。「今回の酒選びはうまくいったな!」と自画自賛。